環境未来住宅コンペティション

第一次審査講評

 コンペ案内募集期間も限られた中,日本全国から32のエントリーがあったことは,東日本大震災からの住まい再建に対して,住宅と建築にたずさわる専門家が関心と貢献への意思を継続させていることの証左でもあり,審査メンバーとして大変うれしく感じた.一次審査は3人の審査員の共同審議で上位10作品を選定したが,応募32作品の審査過程で浮かび上がった「再建する住まい」についてのキーワードをもって第一次審査講評としたい.このようなキーワード抽出はコンペ審査とは無関係のように思われるかもしれないが,津波により不合理にも住まいを喪失した家族に対して,建築家はどんなボキャブラリーを提供できるのか,が今回のコンペでは問われているのであり,東松島で住宅再建に取り組む世帯に対して,一定のメッセージ性をもつものと考えられる.

(1) シンプルな間取り/内部構成の重視

 太陽光発電パネル設置条件も影響したと思われるが,各部屋をシンプルにつなげ,矩形の建物形状に片流れ屋根をのせたプランに合理性とローコスト性を見出しうる一方,対照的に子育て期の家族像を自然と想定させるような,リビングと台所を中心に家族各人の部屋がつながる平面構成をもったプランも見どころがあった.どちらも再建者ニーズにマッチする側面を有していよう.

(2) 住宅建築としてのラディカルさ/従前の住まいへの回復志向

 複雑な建物フォルムを有したラディカルな提案も大災害後であるが故に一定の可能性を有すると思われる.しかし各世帯に決定権のある個人住宅であり,また図面審査だけでは,相対的に見て東松島の住宅再建ニーズとの結びつきが読み切れないケースもあった.ラディカルさをもう少しマイルドに,たとえば広く明るいリビングでうまく家族動線を収めて廊下空間を省略するなど,従前の間取り構成とは異なるが,再建者の思い描く生活像を読み解いた思考作業が感じられる提案は再建者への明確なメッセージとなると思われた.

(3) 防浪性強化としてのタワー志向/近隣コミュニケーション重視のための住宅の接地性

 1階部分をピロティ形式とし,ある程度の津波ハザードに耐える防浪性を持った住まいの提案もなされていた.一方,全体としては平屋形式で近所づきあいをしやすい接地性の高い住宅提案が多勢を占めていた.どちらも津波被災からの再建住宅にとって大事なキーワードであると感じられた.

(4) えんがわ・土間空間の提案

 えんがわや土間といったご近所を中心に他者との関係を空間として受け止める提案も多くなされている.実際の防集事業による住まい再建の取り組み事例からも「新しいコミュニティ」におけるコミュニケーション空間のデザインの可能性はさらに追求されるべき側面をもっているように思われた. 

(5) 「100坪敷地」が可能とする多様な屋外アクティビティへの提案

 コンペ条件にある「高齢者夫婦」の住まいを設計してみると100坪という敷地はさまざまなアクティビティの余地があることも浮かびあがってくる.屋敷林,本格菜園,交流サロン空間といったタームは可能性をもっていると思われる.プライベートとパブリックの領域バランスの取り方,住宅内部空間との関係など再建者が新しい敷地での生活像を考える上で有意義な空間パタンがあるように感じた.

審査委員

市古太郎
(首都大学東京准教授)
古山守夫
(東松島市復興政策部長)
木村健二
(NPO法人日本住宅性能検査協会理事/一級建築士)